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The Mysidian Legend

このページでは「ミシディアの伝説」の読解(?)を行ってみたいと思います。
何て事はない、単に日本語版と英語版5つの紹介をしたいというだけです(笑)。

【原文(1991年)】

りゅうのくちより うまれしもの
てんたかく まいあがり
やみとひかりを かかげ
ねむりのちに さらなるやくそくを もたらさん。
つきは はてしなき ひかりにつつまれ
ははなるだいちに おおいなる めぐみと
じひを あたえん。

されど つかのまの きゅうそくなり。
そのつきは みずからのひかりを もとめて
さらなる たびに みちびかれん。
おなじ ちを ひくもの ひとりはつきに
ひとりは ははなるほしに
ときのながれが そのものたちを ひきはなさん。

「竜の口より生まれし者」はセシルではありません。

ジオット王「あの魔導船の伝説が本物でもない限り‥‥」
『魔導船?
ジオット王「こんな伝説がある。竜の口より生まれし者‥‥」

という台詞から判る通り、魔導船を指しています。
「竜の口」とは魔導船が眠っていた、ミシディア大陸西部の内海の事なのです(ミシディア大陸は竜の形をしています)。
しかし、文語文法の観点から見ると微妙にアヤしい「生まれし者」。
「し」て単なる過去形にしか使えない助動詞なんですが、いいんかいな?「生まるる者」の方が文法的に正しい気がします。

「更なる約束」はゼムスを倒す事=動乱の終結・平和の継続、と見て良いでしょう。
または「眠りの地」を月の民の眠りの地=もう1つの月、と解釈するなら「更なる約束」は月の民の眠りの継続、あるいはもう1つの月が青き星から離れる事を指しているのかも知れません。

後半部は見たまんま、セシルとゴル様の離別ですわね。「光に包まれ恵みを与える」月が「自らの光を求め」るって事は、月の民は智慧と恵みを与える側から与えられる側になるという事でしょうか?

「時の流れ」といえば、仮に青き星の公転周期がこの星と同じだとすれば、ゼロムスを倒してから月が去るまで3年経っている事になるんですよね〜(エンディングのグラフィックで青き星は3回公転してるのよ)。まぁ重箱の隅なんで、私自身そんな事は無視してます(笑)。

次に挙げるのは英語版『FF2』。情報提供Raincrystalさん、Thanks!

【FINAL FANATSY II(英語圏/1991年)】

One to be born
from a dragon
hoisting the light
and the dark
arises high up
in the sky to
the still land...
Veiling the moon with
the light of eternity,
it brings
another promise
to mother earth with
a bounty and mercy.

The moon has just
started to seek for
its own light...

見ると判るとおり、「竜の口」でなく「竜より生まれるべき者」となっています。これは単なるミスでしょう。
また、えびフライの役割が非常に大きくなっていまして(笑)、月を輝きに包むのも、大地に恵みを与えるのもえびフライだという事になっていますね。
情報を提供してくれたRaincrystalさん曰く、「あんまり英語センスがあるとは…」との事。例えば「闇と光を掲げ」の「hoist」は物理的に持ち上げるというニュアンスが強いそうで、確かに手持ちの辞書で引いたら「滑車などを用いて巻き上げる」の意だそうです。後は「大いなる恵みと慈悲」の「a bounty」って、どうしても金銭的な感覚がしません?
でもって、後半部は「同じ血をひく者…」以下が訳されてない、と。

次に挙げるのはPS版FF IVガイドブック表紙に書かれていた英語版。

【PS版ガイドブック表紙(1997年)】

Born of a dragon's mouth,
he whom soars high in the heavens,
carrying the darkness & the light,
brings new promises to the sleeping earth.
Sheathed in neverending light,
the moon bestows blessings and favor
upon the mother land.

実に美しい英語で、日本語しか解らん私にはコメントできません(^^;)。
で、Raincrystalさんに聞いてみましたら「語意的にも意味的にもこっちのがいいね」だそうです。
しかし、このバージョンには後半部がな〜い(泣)。前半部をセシルのイラストに使った私としては後半部でゴル様!だったのですが、英語版の訳を用いる気にはなれず、自力で訳せばそれ以下になり……(苦笑)。

続いて挙げるのは2001.06.29(現地日付)に英語圏で発売されたFINAL FANTASY CHRONICLESより。
情報提供I.Y.さん(前半部)、Syntycheさん(後半部)、ありがとうございます〜!

【FINAL FANTASY CHRONICLES(2001年)】

One born of a dragon,
bearing darkness and
light, shall rise to
the heavens over the
still land.
Bathing the moon in
eternal light, he brings
a promise to Mother Earth
with bounty and grace.

But someday the moon
shall depart, seeking
its own light. The sons
of moon and Earth shall
then part, divided by
the flow of time.

おめでとう!後半部、一応全文訳されました!
しかし相変わらず「竜より生まれし者」ですね。殆どの英語話者は「生まれし者」がえびフライだと気づかずセシルだと思っているそうで、月の民が竜だと思い込んでいる人の多いこと多いこと(笑)。
で、月を輝きに包むのも大地に恵みを与えるのも、これまたえびフライ…。

Syntycheさんが「なぜ英語話者は魔導船だと気づかないか」についてご説明下さいました。
英語では、船を人称代名詞で呼ぶ時に she を使うそうです。しかし英語版(ガイドブック表紙版も含めて)では「生まれし者」が he で表されていています。そのため、英語話者にとって魔導船であることを気づくのはほぼ不可能だそうです。
ミシディアの伝説を英訳した人は、もしかして魔導船だって知らずに訳したのかもしれません……(汗)。

そして、2005.12.12(米日付)に北米にて発売されたFINAL FANTASY IV ADVANCEでの英訳は以下の通り。Aywrenさんのご尽力に感謝します。

【FINAL FANTASY IV ADVANCE(北米版 / 2005年)】

One born of a Dragon,
bearing darkness and light,
shall rise to the heavens
over the still land.
The moon's light eternal
brings a promise to Earth
with bounty and grace.

After brief pause, the moon
travels forth, seeking another
in search of its radiance.
Though all the same blood, one
Earth and one moon, time's march
alone keeps two far apart.

おそらくは最も原文との相違が少ないであろう訳ですね(うるさく言えば恵みと慈悲を与えるのが月か月光かの違いはありますが)。PSガイドブック版、CHRONICLES版における he/she 問題も解決しています。
「time's march alone keeps two far apart」のほうが原文より切なさを増しているように思えるのは気のせいでしょうか。

2008.07.22(米日付)に北米にて発売された DS 版での英訳は以下の通り。

【FINAL FANTASY IV DS (北米版 / 2008年)】

Birthed from womb of Dragon's maw
And borne unto the stars
By light and darkness cast aloft
And dreamtide oaths resworn
Moon is swathed in ever-light
Ne'er again to know eclipse
Earth, with hallow'd bounty reconciled

Yet fleeting is the reverie
When moon from shadow has egressed
Guided forth anew by light made manifest
Two bound by ties of blood
By Time and Fate then wrest apart
Unto lunar light and Gaian breast

満を持して文語表現です。
「竜の顎の胎より生まれ」という表現は何も知らない人が見たら仰天するでしょう。徹底的に「この『竜』は動物じゃない」アピールしています(笑)。なお「birth」は名詞ですが、アメリカ南部方言では「birthed」「birthing」と言うこともあるそうです。(参考ページ
FF4A にて「最も相違が少ない」状態にこぎつけたものの、本作のバージョンで再び原文と「主語述語の対応が異なる」状態になった模様。
私はあまり英語が得意ではないのでこれは誤読だと思うのですが、「月が青き星を侵すことは二度とないだろう」と暗示されてるように読めるのは気のせいか。本作が出た頃、日本では「月」がまた厄介ごとを FF4 世界に持ち込んでいたのですが……(笑)。


以下に挙げるのは各国語Googleで「"FINAL FANTASY IV"|"FINAL FANTASY 4"|FF4 Mysidia」と検索した結果から拾ったものと、「White Magic」さんに掲載されていた中国語版。もちろん発売日がいつだったかとか、どう訳されているのかなんて解りゃしないのだ。えっへん。
そしてメールで頂いたスペイン語版ミシディアの伝説全文も掲載です。
※Netscape 4.x以前は文字実体参照の実装が不十分なため、表示できない文字があります

【ドイツ語版】

Er, geboren von einem drachen,
der Licht und Dunkelheit in sich trägt,
wird sich in die Himmel über dem stillen Land erheben.
Den Mond in ein ewiges Licht hüllend,
wird er der Erde, voll Würde und Großmut,
ein Versprechen darbringen.

【フランス語版】

Né du dragon, il s'envolera aux cieux,
flottant au-dessus de la terre tranquille,
portant ombre et lumière.
Eclairant la lune d'une lumière éternelle,
il apporte une promesse à la Gaïa
avec grâce et munificence.

【中国語版】

CHINESE

【スペイン語版】

== La leyenda de Mysidia ==
Uno que nacera de un dragon
portando la luz y la oscuridad
se elevara a los cielos
por sobre la tierra firme.
Bañando la luna en luz eterna
traera consigo una nueva promesa a la madre tierra
con gracia y abundancia.

El dia llegara en el que la luna busque su propia luz.
Los hijos de la Tierra y la Luna, separados estarán,
dividos por el flujo del tiempo.

※スペイン語版はMagnus LeshnerrさんによるFINAL FANTASY CHRONICLES版の非公式翻訳です。Magnusさん、本当にありがとうございます!



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