起源譚と英雄譚〜序文として〜

神話とは何か。簡単に分けて2つの要素がある。

一つは「起源を語る事」である。
小さな子供が「どうして?」を連発する。「単なる好奇心」と片付ける事もできるが、その根底には「理由を知る事で現在が保証されて安心できる」という心理があるという。それと同じように「〜というわけで人間が誕生した」と語る事で人間という種は根無し草のように不安定に漂う存在ではなく、確固たるアイデンティティを持てるのである。
そういう意味では天文学者が宇宙の始まりを追求するのも又「神話」を求めているといえるのかも知れない。

もう1つは「英雄譚」である。
「自分の世界から違う世界に行き、何かをなしとげ帰還する」というのがその単純化した図式になるが、この「異界」は例えば天界や冥界といった物から「迷宮」も含まれる。決して「自分の世界にやって来た外敵を討つ」のではなく、自身が異界に赴かねばならない。
そして、「なしとげる」事は表面的には魔物や竜の退治かもしれないが、実際には英雄の内面世界の成長を示唆するのである。

「起源譚」は望むべくもないが「英雄譚」としての機能は、ファンタジーRPGは果たし得るのかも知れない。
ファンタジーRPGが「英雄叙事詩」というものの存在しない米国で発祥したという事実を思うにつけ、ついそう考えてしまう。


【参考資料】
・大学の講義ノート


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