母なる地、父なる天

FF4には「母なる大地」の概念が登場する。
狩猟・農耕社会にはほぼ共通する概念で、肉体とそれを維持する糧(つまり食物)は大地の「産み出した」ものであるという考えである。よって、殆どの神話では大地の神は女神であるし、「土」を意味する単語は女性名詞である場合が非常に多い。

日本神話だと土の神は
『古事記』:ハニヤスビコ・ハニヤスビメ(兄妹神)
『日本書紀』一書第2、3、4: ハニヤマビメ(女神)
『日本書紀』一書第6 :ハニヤスノカミ(性別については言及なし)
であるが、それらを産み出したイザナミは『日本書紀』において大地そのものを産み出しているので、やはりここにも「大地母神」のモチーフが見られる…と思う。

反面、牧畜社会で有力な考えは「父なる天」で、これの一番判りやすい例は旧約聖書だろう。牧畜社会での大地は荒野である事が多いため、大地を恵み深い物と考える事はあまりなかったらしい。すると牧者にとって重要なのは「道を指し示す天体」になり、それが「父なる天」に結びついた…のだろう(やや自信なし)。

FF4のエンディングでゴルベーザが月に残ってしまうのは父の世界という「天界」に残ってしまうという解釈が可能で、対してセシルが青き星に戻るのは母の世界という「人間界」に戻るとも読める。
「聖婚」の項と重複するが英雄は人間の世界に恩恵を与えて「帰還」せねばならないわけで、天界に行ったっきりのゴル様は英雄になれないのよ…………ふぅ。

それにしても、FF4は「父なる天」の印象が強くて、FF7は「母なる地」の印象が強い。エアリス、母親の事は話しても父の事は話していないのでは?(プレイしていないのでよく知らないのですが…)

なお、例外的なのはエジプト神話で、エジプト神話では大地の神シブは男性、天空の神ヌートは女性。


【参考資料】
・大学の講義ノート
『口語訳古事記 完全版』(三浦 佑之/文芸春秋社、2002年)
『岩波文庫 日本書紀〈1〉』(岩波書店、1994年)


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